第6章「いざ!メロサティ島へ!!!」

ゼミ生ははっと我に返った。
亮(リョウ)からの一言で皆慌てて飛行機に乗り込み、すぐに離陸した。この時ゼミ生の一人が機内に見当たらないことに気付く者は誰もいなかった・・・(ブログ後半でこの事実が明らかになる)。

さて、ここで亮について紹介していこう。この男の特徴を一言で表すとするならば“不死身の男”、いや“おきあがりこぼし”といった方が正確かもしれない。これまで3年近く、何度も地面に叩きつけられようとも屈することなく、図太く這い上がってきたのが彼だ。一例を挙げよう。昨年ネパールで、国際学生サミットの前日、亮は心身疲労のためにパスポート入りのバッグを公共の場に置き忘れた。それを見つけた関先生は戒めのために一時黙って自分の部屋に保管したのだそうだ。するとその事実を知った亮は逆切れし、血相を変えて関先生の部屋に猛抗議に行ったそうだ。するとあの関先生が、「亮があまりに頭に血が登っていたので思わず謝罪した」とのこと。自身の過失までを武器にして先生に立てつくほどの類稀なるタフさを備える逸材だ。関ゼミ生最長記録保持者でもある。彼の記録を破る者は今後そう簡単には現れないだろう・・・。


無事離陸した飛行機の中。シートベルト着用サインが消えると、一斉に皆動き始めた。
「え、何この集団。疲れ果てているはずなのにまた動き始めた。」
その異様な光景は、客室乗務員たちが不気味な気配を感じ、機内サービスを躊躇うほどであった。
しかし彼らには動き回らねばならぬ理由があった。目的地に着いたらすぐに、ネパール学生とオープニングセレモニーが開催される。その準備がまだ終わっていなかったのだ。飛行機の中で映画や食事を楽しむ余裕はなかったのである。

国際学生交流プログラムのオープニングセレモニーと言えば、まずは衣装だ。日本文化を代表する衣装でネパールの皆を魅了しなければならない。しかし。彼らは皆10,000ボルトの雷に打たれ泥だらけ、ボロボロ。
「準備の前にまず着替えよう!」
ミャンマー人リーダーのトウエが大きな声で叫んだ。悲鳴にも近い。なお、機内にはなぜか女子には浴衣男子には甚平が既に用意されていた。
その声と共に皆一斉に立ち上がり、男子はその場で躊躇もなく洋服を脱ぎ始めた。すると普段は物静かな凛(リン)から

「ちょっと!!失礼ね。男子はトイレで着替えて!!!」と鋭い指摘。

その一言に男子一同、ばつが悪そうにトイレに向かった。(どうやら今年の関ゼミは女子の力の方がが強いようだ・・・。)
男子は機内の狭いトイレでこそこそと、一方の女子は座席で堂々と着替えた。この光景こそが今年の関ゼミの実態なのだろう。
着替え終わると次にゼミ生それぞれが日本文化を紹介する動画を作り始めた。内容は書道や獅子舞から日本の宗教観念や線香花火、納豆まで様々である。
「火事場の馬鹿力」とはこのことだろう。飛行機が目的地に向かうまでの間、ゼミ生の酋長力は一時たりとも途切れることなく、一人一人の個性が爆発するような動画が次々とできあがった。
しかし、セレモニーの準備はまだ終わらない。ゼミ生17人が1人1スライドを担当して自己紹介を行う。もちろん英語で。自分の特徴を表す英単語をタグ付けし、趣味や写真を貼り付ける。
このころになると、疲れを通り越して皆ぶっ飛んでしまっていた。例えば、佳穂(カホ)。煌びやかな衣装でサンバを踊る関ゼミの舞踏家である。また、静華(セイカ)は「みんな見て、私はネパールを漢字で書いた見たわ。どう」と自慢げだ。一同「ウォー」と叫びなぜか佳穂につられてサンバを踊り始めた。この切迫した状況の中でも、ネパールを漢字で書いたことを、世界の最高峰エベレストにでも登頂したかのように喜ぶ静華。それにサンバで応じる佳穂やゼミ生たち。もはや・・・。

機内は一気にバブリーと化した。
オープニングセレモニーで披露するダンスの復習だ。1ヶ月以上前に汗水垂らして覚えたダンスを今必死に思い出す(詳しくは第二章参照)。大丈夫、体はまだ鈍っていない。頭が覚えていなくとも曲が流れ出せば自然と体が動き出す。指先が、手が、ダンスを練習したあの熱き日々を覚えているのだ。そうして各々が動画作成やダンス練習に没頭し始め、機内はもうカオス。客室乗務員たちもお手上げだった。

ふと亮が呟いた。
「ねえ、美結(ミユ)居なくない??」
そう言えば、ダンスの冒頭で圧倒的な存在感とともに踊り出す予定の彼女の姿が見当たらない。しばらくの沈黙に続き、物静かな凛が再び悲鳴を上げた。
 「美結、最初から飛行機に乗っていなかったよ。なぜ置き去りにしたの?あんまりだわ。」
 皆の冷たい視線がリーダー、トウエを突き刺した。するとトウエの口からとんでもない一言が。
「ごめんなさい。数え間違えました。」
「絶句・・・」
しかし飛行機は着陸体勢に入るため高度を下げ始めていた・・・。

いよいよメロサティ島が眼前に現れた。(メロ・サティはネパール語で私の友達の意。2015年以来、私たちのプロジェクトは「メロサティプロジェクト」と呼ばれている)。この島はコロナフリー。歴代関ゼミ生がこの時のために長年作り上げてきた夢の島である。夢の島とは?つまりバーチャル島だ。オンライン上、次世代型の島である。対面型交流では実現の難しかったあらゆることが実現可能な夢の島。ただしここには選ばれた者しか立ち入ることのできない世界で唯一の島である。

トウエの致命的な「点呼ミス」により一名を欠いてしまったが、ゼミ生はとにかく席に戻り着陸に備えた。

しかし、異変はさらに続く。いつまで経っても飛行機が着陸体制に入らず、上空で旋回しているのだ。「今度は何?」皆に不安がよぎる。

その時パイロットから機内放送が流れた。

「残念なお知らせです。メロサティ島の滑走路が未完成なため、当便は着陸することができません。」

「もう関ゼミ、無茶苦茶だ。オレ、台湾に帰る」これまで笑顔を絶やさなかった陳(ジュン)が気が狂ったかのように非常ドアを開け始めた。皆必死に陳を押さえつける。しかし陳の力が予想以上で、5人がかりで次から次へと飛び掛かった。

その時だった。
登山を趣味とし野生的視力を持つ千咲(チサキ)が窓の外を見つめながら呟いた。

「あれ、美結じゃない?」


何やら人影が見えた。間違いなく美結であった。安全第一のヘルメットをかぶって未完成な滑走路を必死に作り上げている姿が見えた。その姿は機内のテレビにも大きく映し出され、肉眼と画面上で、彼女の必死な姿を目に焼き付けることとなった。
ここで美結を紹介しよう。
美結は東経大生であるが、事情により関ゼミ履修で単位取得できない。それでも聴講生としてゼミ活動を志願してきたストイック学生。

さらに彼女はカリスマ性の塊である。通常、他の授業と被っているため4限目のゼミには参加できないが、サブゼミが始まる5限目前の休憩時間に彼女はやって来る。前の必修授業が終わるやいなや休憩も取らずに・・・。なんて凄まじい熱量だろうか。彼女がZoomに入る瞬間は他のゼミ生は休憩中でカメラをオフにしているため姿が見えない。
授業終わり、関先生が偶然カメラとマイクを切り忘れていた。糖分補給を兼ねて束の間のお菓子タイムを楽しんでいる。ガムを噛む音がネットを通して響き渡っていた(笑)。その音を彼女のレーダー探知機が察知し、ロックオンする。

「関先生、今日はどんな授業でしたか?」

参加できなかった90分の授業時間を取り戻すべく先生との熱い議論が繰り広げられる。

その時間わずか10分。

休憩を終えたゼミ生たちが再び討論を始めると、彼女も最初から参加していたかのように惑うことなく話に加わるのであった。

滑走路完成のため、工事現場指揮官を務めている美結をゼミ生が上空で見守っていると、彼女が額に流れ落ちる汗を右腕で拭いながら上空を見上げウィンクした。この瞬間は機内の画面上に大きく映し出され、“滑走路が完成した”という合図であることを全員が察知した。
機内は歓喜で沸き上がり、パイロットから注意の放送が流れるほどであった。

そしてついに全員が無事にメロサティ島に到着し足を踏み入れた。
「美結、ありがとう!」「美結のおかげで島に着陸することができた!!」
ゼミ生全員が彼女のもとへ駆け寄り、胴上げをし始めた。美結の被っていた安全第一のヘルメットが快晴の青空高く舞い上がったその先にはオープニングセレモニーへのアドバルーンが私たちを誘うように風に靡いていた。
これはオープニングセレモニーが始まる合図でもあり、「日本―ネパールオンライン交流プロジェクト」が開始された瞬間でもあった。私たちは苦難の末に、ようやくその入口へと歩き出したのだ。

次回「ついに!ネパール学生とのオープニングセレモニー開幕!!」

Merosathi Online Project 2020 第2セクション~このプロジェクトはまだ始まったばかり~



2回目のメロサティオンラインプロジェクトから2週間後の7月31日に、第2セクションの発表がありました。今回のテーマは、「各国のお祭りについて」。ネパール人メンバー、日本人メンバー合わせて5〜6人ほどの人数で6グループに分かれました。そして、1年間を区切って決められた期間の間に行われるお祭りについて紹介しあいました。伝統のお祭りに限らず、学校行事のお祭りなども含めて紹介しました。

前回のテーマは、準備期間が1週間しかありませんでした。しかし今回は2週間も準備期間があったため、グループ内でたくさん話す時間がありました。よって前回よりも、お互いの国やお互いのことが知れて、さらに仲が深まったのではないかと感じました!

そして発表当日は、そのグループの仲の良さがとても伝わるものばかりでした!また、みんなで協力して作ったパワーポイントや工夫された発表などグループの個性が溢れていました!実際のお祭りの写真を使ったり、お祭りで食べられているものを見せたり、歌を歌っているグループがいました。オンラインでできる最大限の方法で、お互いの国のお祭りについて知ることができました。とても楽しく、有意義な時間を過ごすことができました。

次のセクションではどのようなテーマで、どのような発表になるのか。また今後、より一層交流が活発になり、すごいものができるのではないかと今からとてもワクワクしてます!今後のメロサティオンラインプロジェクトの活動に、ますます目が離せません!


このプロジェクトの様子は、SNSで随時発信しているのでよろしければご覧ください!

またこちらのブログでは、ゼミでの日常をおもしろく発信しています。世の中が大変な状況でも、楽しく頑張るゼミ生の日々をぜひ覗いてみて下さい!
このブログを読んだあなたは、きっと笑い転げること間違いなしです!!

(文責:稲村凛)