海外ゼミ研修(ベトナム)報告書 斎藤翼(経済学部4年)
私は大学の研修で二週間ベトナムを訪れ、異文化交流を通してベトナム人のマインドセットに触れる機会を得た。今回のテーマは、自分とベトナム人との価値観や考え方を比較することであり、ただの観光や活動ではなく、自分の成長と学びに直結させることを意識して臨んだ。特に、昨年ネパールでの研修で思うような学びが得られなかった経験があったため、今年はより主体的に考え、行動しながら参加することを目標とした。その結果、言語の壁を感じながらもコミュニケーションの大切さを痛感し、英語を単なる道具として捉えるだけでなく、自分自身の考えや価値観を明確にし伝える必要性を理解することができた。また、他者との交流を通じて自分の成長について深く考える機会ともなり、これまで意識してこなかった「自分を変える努力」に向き合う大切さを学んだ。さらに、この二週間は学びの連続であり、日常生活の一瞬一瞬に気づきが潜んでいることを実感できた点も大きな収穫であった。
まず一つ目に学んだことは、学びの主体性である。私は今回の研修に臨む前から、昨年ネパールでの経験を反省し、ただ与えられたプログラムをこなすのではなく、自分から積極的に関わりたいと考えていた。ネパールでは、訪問先で説明を受けたり観光地を巡ったりする中で「楽しい経験」を得たものの、それが自分の成長につながったかと問われると、どこか物足りなさを感じた。そのため、ベトナムでは研修中に生じる小さな出来事をも学びのきっかけに変えるよう意識した。例えば、現地学生との会話や日常の食事、移動中の雑談であっても、自分が何を知りたいのかを考え、質問を工夫し、相手の答えを受けてさらに考えを深めるよう努めた。その結果、学びというのは受け身で得られるものではなく、自分から動くことによって初めて価値が生まれるのだと実感することができた。
二つ目は、言語の壁が信頼関係の深まりを妨げるという気づきである。ベトナム人学生たちとは毎日のように行動を共にし、互いに助け合いながら活動した。時間を共有する中で一定の親しみや信頼は生まれたものの、より深い部分で分かり合うためには言語の理解が不可欠であることを痛感した。私は英語が得意とは言えず、相手の発言を十分に理解できないまま会話を進めてしまうことが多かった。そのたびに「もっと正確に理解したい」「自分の考えをはっきり伝えたい」という思いが募った。もし同じ時間を日本語で過ごせたなら、もっと豊かな議論や深い交流ができただろうと感じることもあった。しかし、そのもどかしさが逆に私に努力を促し、わからない単語を調べたり、表情やジェスチャーを使って必死に伝えたりする姿勢へとつながった。この経験は、言語能力だけでなく、相手を理解したいという強い気持ちそのものが大切だという気づきへと結び付いた。
三つ目に学んだことは、英語はあくまでもコミュニケーションの手段に過ぎず、大切なのは自分の中に確固とした「伝えたい思い」を持つことだという点である。いくら英語が流暢でも、自分の考えが曖昧であれば相手に響くことはない。私は研修の中で、相手を知ろうとすることを目標に掲げ、文化や習慣、家族のことなどを積極的に質問した。そしてただ聞くだけでなく、自分の考えや日本での生活についても共有するよう心がけた。こうした双方向のやり取りを重ねる中で、相手は安心して心を開いてくれた。つまり、重要なのは言語力そのものよりも、自分の内面をどう形づくり、それをどう発信するかだと気づいた。この学びは、今後どの国の人と交流するときにも生きるだろうと感じている。
四つ目は、自分の成長について深く考えるきっかけを得たことだ。中学生の頃は将来の自分を思い描きながら日々を過ごしていたのに、大学生活が進むにつれ、いつの間にか成長することを意識しなくなっていた。特に、変化することへの恐怖心から「自分を変える努力」を避けてきた面があった。しかし、ベトナムでの活動中、プログラムの進行が思うようにいかず仲間や先生が疲弊している姿を目の当たりにし、自分も何か役に立ちたいと強く思った。大きな力はなくても、相手の負担を少しでも軽くできるよう細やかな気配りを心がけた。例えば、移動の手配を手伝ったり、仲間の表情を気にかけて声をかけたりするなど、小さな行動を積み重ねた。その積極的な姿勢は、プログラム全体を軌道修正する大きな力にはならなかったかもしれないが、自分自身にとっては「変わる勇気」を得る大切な経験となった。研修を通じて、私は再び「成長したい」という気持ちを取り戻すことができたのである。
以上の四つの学びを通じて、私はベトナム人のマインドセットに触れるだけでなく、自分自身を深く見つめ直すことができた。ベトナム人学生は明るく前向きで、仲間を大切にしながら困難にも笑顔で挑んでいた。その姿は、自分がつい忘れがちになっていた前向きさや主体性を思い出させてくれた。異文化交流は相手を知るだけでなく、自分を照らし返す鏡でもあるのだと強く感じた。
今回のベトナム研修は、単なる異文化体験にとどまらず、自分自身の姿勢や考え方を見直す大きな契機となった。主体的に動くことの大切さや、言語の限界を超えた心の交流の価値、そして「伝えたい思い」を持つことの重要性を学んだ。また、自分が変わることへの恐れを克服し、小さな行動を積み重ねることで周囲に貢献できることも体験した。この二週間で得た学びは、今後の人生において必ず糧になると確信している。異文化交流を通じて得られた気づきは、私の価値観をより広く深くし、将来の生き方を形づくる基盤となった。これからの人生においても、今回の経験を忘れず、自らの成長を恐れずに歩み続けていきたい。
.jpg)


コメント
コメントを投稿