海外ゼミ研修(ベトナム)報告書 坂本弥宥(経済学部4年)
はじめに
2025年9月、私は2週間にわたりベトナムで行われた研修に参加した。自身の研修の主な目的は現地学生との交流を通して異文化理解そして自己理解を深めること、また自らの成長を確認することである。本レポートでは、研修を通じて特に印象に残った「異文化交流からの学び」と「自分自身の成長」について述べる。
異文化交流からの学び
研修の中で強く印象に残ったのは、ベトナムに根付く「男児を尊ぶ」文化について知ったことである。現地学生との会話の中で、ベトナムの地方の家庭では「男の子を望む」価値観が存在することを耳にした。男児が生まれることは家の名を継ぐことや経済的な支えにつながるとされる一方で、女児は結婚後に家を離れる存在として位置づけられてきた歴史的背景があると聞いた。もちろん都市部では価値観が変化しつつあるが、地方では依然としてその傾向が残っているという。日本でも過去には似た意識が存在したが、現代ではあまり耳にしなくなったため、私は大きな衝撃を受けた。
特に印象的だったのは、ある学生から聞いた実体験だ。その学生の家庭では、第一子として生まれたのが男の子でなかったため、父親が妻子を置いて家を出ることになったという。その結果、その学生と姉の父親はそれぞれ別の人物だという事実を知った。また、姉は自身が男児でなかったために家族が離散したことを深く感じ、それが原因でレズビアンとして生きることを選んだと聞いた。こうした話から、一つの文化的価値観が個人の人生をこれほどまでに大きく左右することに大きな衝撃を受けた。性別によって期待される役割が異なる社会の姿を知った。
このように、ベトナムの文化や現地学生の生活に触れることで、私は日本の常識を相対化し、多様な価値観を受け入れる柔軟さを培うことができた。
自分自身の成長
今回の研修では、自分自身の成長を2年前の同じ研修との比較から強く実感することができた。2年前、私は初めてベトナムを訪れたが、その際は英語でのやりとりに大きな壁を感じていた。会話を聞き取ることはできたが、自分の意見を伝える場面では言葉に詰まり、ベトナムの相手学生の英語力に頼ってしまうことが多かった。結果として、研修の場でも受け身になりがちで、自分から積極的に交流を広げることができなかったという悔いが残った。しかし今回は、英語を使うことに以前ほどの不安を感じなかった。ソルファームでのセルフリフレクションに関するディスカッションやFTUでの就活に関する議論の際も、自分から意見を述べたり質問をしたりすることができ、現地学生とのやりとりを楽しむ余裕すら生まれた。完璧な英語ではなかったが、分かったふりをせずに意味が分かるまで確認し、相手に伝えたいという気持ちを前に出すことで会話が成り立ち、交流の幅が広がっていくのを実感した。この変化は、大学2年の夏からのベトナム・タイ・バングラデシュでの国際交流の経験と自己で積み重ねてきた英語学習の成果であると同時に、過去の失敗を教訓に「失敗を恐れて挑戦しないのは損」という姿勢を持てたことが大きいと感じている。
さらに、行動の柔軟性という面でも成長を感じた。2年前の私は予定外の出来事があると動揺し、戸惑うことが多かった。しかし今回は、突然の予定変更や予期せぬトラブルに遭遇した際、トラブルはつきものだというマインドのもと落ち着いて対応できた。以前の自分であればスケジュールの変更に対して、不安や怒りが先立ち、消極的な行動しか取れなかっただろう。こうした経験を通して、環境や状況の変化に柔軟に対応できる自分へと成長していることを実感した。
また、私にとっての最も大きな成長は、現地の学生と深いレベルで心を通わせることができたことにある。初めて会ったにもかかわらず、お互いの家庭環境といった、普段は他人に話すことのない個人的な悩みを打ち明け合うことができた。母語が違うにもかかわらず、英語という共通言語を通じて深い信頼関係を築けたことは、何物にも代えがたい経験となった。言葉が完璧でなくとも、相手に寄り添い、お互いに不完全なものを補い合い真摯に向き合うことで、私たちは単なる交流を超えた絆を育むことができたことは、私にとってかけがえのない経験となった。
今後への活かし方
今回の学びは、今後の大学生活や将来に大きく活かせると考えている。私は将来、大学職員として高等教育機関に従事することが決まっている。この道を選んだのは、私自身が大学生活での国際交流活動を通じて、人の挑戦を支援することの尊さを実感したからだ。今回の研修で得た知見は、将来の仕事において大きな財産になると考えている。文化や家庭環境が人の生き方や価値観に深く影響することを学んだ経験は、学生一人ひとりの多様な背景を理解し、その可能性を引き出すための支援をする上で不可欠な視点となるだろう。今後も、常に相手の背景に敬意を払い、一方的な価値観で判断することなく、多角的な視点から物事を捉える姿勢を大切にしたい。そして、自身の大学生活の経験を活かし今後も国際交流の場に積極的に関わり、学生の異文化理解を実践的に奨励していきたい。
まとめ
今回のベトナム研修は、文化や生活の違いに触れることで価値観を相対化し、自分自身の成長を確かめる機会となった。産み分け文化や家庭環境の比較から得た学びは、今後の学問やキャリアに直結する大きな気づきであり、2年前の自分と比べて英語力や柔軟性の面で成長できたことは大きな自信となった。この貴重な機会を与えてくださった先生方や職員の方々、現地学生、共に学んだ関ゼミの仲間に感謝の意を表し、今回の学びを今後の人生に活かしていきたい。
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